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NITABOHトップページ / メイキング / いよいよクライマックスダビング完成へ / 陰の力
音と画面を合わせる場面で最も苦労したのは、この映画のもう一つの主役「三味線の音」である。
上妻宏光の三味線が冴える仁太郎の三味線のシーン。従来のアニメーションではその撥捌(ばちさばき)や弦を押さえる指の動きは、なるべく見せないで音をはめこんだ。
しかしこの映画ではあえてそれを見せた。しかも撥の動きや指の動きが音とぴったり合うように製作された(2002年1月23日のメイキングを参照)。
実際の演奏を撮影したビデオテープから、その動きを1秒24コマのタイムシートに書き写していく。
そのビデオテープとタイムシートを見ながらアニメーターは動きを作る。早いところで1秒間に9回も撥が弦を打つ。
それを表すためには1コマに何枚もの動画が必要になる。通常劇場用アニメでも2コマや3コマに1枚の動画が標準的だが、「NITABOH」の三味線シーンでは1コマに何枚もの動画が使用された。
全ての三味線演奏のシーンでこうしたスポッティング作業が行われたが、それを担当した制作の石橋さんの苦労は、並大抵のものではなかった。
タイムシート(クリックで拡大)
映画の中で、誰も聞いたことのない音が出てくる。当道座のボサマにいじめられ、三味線が放り投げられる場面がある。三味線が地面に放り投げられる音など誰も今まで聞いたことがないだろうし、仁太坊がイタコの修行をする場面に出てくる弓のような楽器“梓弓”(あずさゆみ)も同様に見たことがないだろう。これらは、実際に三味線を地面に投げたり、梓弓の画像や音が録音された貴重なテープを青森から取り寄せ、それを基に日曜大工センターで材料を買って“梓弓”を作って音を出した。こうして映像と違和感のない「らしい音」に仕上げられたのである。効果音の作業は地味ではあるが映画の中の世界を活き活きさせ、観客を物語の世界に引き込む重要な作業である。おかげで、三味線を一竿(さお)壊してしまったのだが・・。
音響の話ではないが、裏方の作業をもう一つ紹介しよう。仁太坊が自らの芸に行き詰まり、寺の住職から「守破離」の教えを受ける場面。
住職が筆で書く「守破離」の文字が、まるで本物の筆ですらすらと書かれるように見える。これは「消し込み」という技法で作られている。「守破離」の書き上がった絵を筆の動きにあわせ、書き上がった状態から逆に消しながら一コマ一コマ撮影していく。これを逆に並べると何も書かれていない紙に字が書かれていくように見える。かつてはセルに書かれた文字を少しずつ削り取りながら、フイルムを逆回転させて撮影した。いまではコンピュータ上でこの作業が行われる。制作担当の上原さんによる繊細な仕事の一つである。
こうした地味な作業が「スクリーン上のリアリティ」を作る。逆に、リアリティを壊す画面や音の欠陥は作品自体を損なうこともある。効果音も三味線の動きを作るためのスポッティングも、消し込みの作業も、実は「NITABOH」というアニメに命を吹き込むための、地味だが欠くことのできない作業なのだ。「アニメーション」とはもともと「生命を吹き込む」という意味の言葉である。絵を描くスタッフや声を吹き込むスタッフ、華やかな三味線やオーケストラの陰で、こうした裏方の努力がやはり作品に命を吹き込んでいるのだ。

ダビング開始から三日目の真夜中。
ついにラストシーンの音がはめ込まれて「NITABOH」は完成した。
エンディングテーマが流れる中、ふとミキシングテーブルを振り返ると、ローリングタイトルを見つめる、精魂を注ぎ込んだスタッフ達の顔があった。西澤監督を始めとするスタッフそれぞれに、「それぞれのNITABOH」があるような思いがした。
 
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