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NITABOHトップページ / メイキング / アフレコ / Yaeさんと子役編
ふつうアニメでは、大人の声優さんが子どもの声を演じることが多い。が、「NITABOH」では子ども役をオーディションで選考。子ども時代は子どもの声で吹き込むことにこだわった。
初日は、Yaeさんと子役3人のアフレコ。Yaeさんにとっては、初めてのアフレコ挑戦になるという。待合室にも緊張感が漂い、ビデオ撮影も“NO”という、集中ぶりだった。Yaeさんの役どころは、とても難しい。仁太郎を生んですぐに亡くなった母(おきぬ)役で、イタコの口寄せで、仁太郎の前に現われる。芸に行きづまり修行を決意する仁太郎に、「自分が死んで淋しい思いをさせてすまなかった」こと「いつもどこからか見守っている」ことを伝えなければならない。短いセリフだが、亡くなっている母の役は、気持ちの入れ方も微妙に難しい。演技指導の佐藤さんからは「心配しつつも、大きな愛で包みこみ、そして、つき放す気持ちで」「“いつでもあなたを見守っている”というのも今思ったんじゃない。今までもずっとそうだったんだ、ということを忘れないで。」との注文が。セリフの中でどの言葉が大切か、具体的なやりとりのため佐藤氏は何度もアフレコ室 とモニター室を行き来する。
「私、何かまだ気持ち入ってませんよね。もう一度やります」とYaeさんも真剣だ。開始から2時間、おきぬの絵にYaeさんの声がピッタリ重なって、監督からもOKサインが出る。
「難しかったです。でも、やらせていただいてよかったです」と、語ってくれたYaeさん。
お疲れさまでした。
午後からは3人の子役がアフレコに挑む。“絵の口の動きにピッタリと合うように、セリフが言えるのかしら”と、心配していたのだが、3人とも劇団に所属し日頃子役として活躍している。その点は問題なくクリアできた。が、問題は他にあった。「NITABOH」は江戸末期から明治にかけての話。『今の子どもたちが、当時の子の気持ちにすんなり入っていくのは難しいだろう』と演技指導の佐藤氏も読んでいた。前もって台本を渡して練習してきてもらったのだが、セリフの意味は解釈によっても、微妙に違いがでる。何行かあるセリフのどこに力を入れるのか、どのセリフがポイントにな るのかなど。一人一人に佐藤氏の細かい指導が始まった。仁太郎役の村田くん。ユキ役の古川さん。留吉役の田谷くん、と佐藤氏のやりとりを少し紹介すると――。
祭りの帰り途、病にかかり仁太郎が熱にうなされる場面。
『ハア、ハア、ハア』『とうちゃん』と呼びかけるシーンでは。
藤氏「村田くん。熱出したことあるだろう。どのくらい出た?」
村田くん「はい、41度くらい」
佐藤氏「えー、そんなに?どうだった?うんうんうなされただろ?つらいよな」
村田くん「うん、ボーッとしてて」
佐藤氏「そう、その時の感じだ。つらいんだよ、体が」
『ハアハア』という息ひとつ、村田くんをその気にさせて、病気の臨場感を出そうとする。2人の息も次第に合っていく。

目が不自由になった仁太郎が、虚無僧になると決心する場面。
『オレ、尺八をいっぱいけいこして虚無僧になる』と父ちゃんに告げるシーンでは。佐藤氏「この時、仁太郎は決心したんだ。もっと決めた!って感じが欲しいな」また、父ちゃんに『虚無僧は侍しかなれない』と言われ、『じゃ、おれ何になればいいんだ?』と父につめよるシーンでも、
佐藤氏「ここは大事だよ。やっと決心したのにダメだと言われ、おどろいて。じゃ、どうすればいいんだ!って悩んでいる。そんなこと考えてごらん」
「もうひとつ。仁太郎は目が不自由なんだ。そんなにスッキリと言っちゃ違うんだ。子どもながらにすごく複雑な気持ちなんだ」気持ちのこめ方や、どんな思いで言ってるか、そんな細かい要求が出され何度も言い直す村田くん。確かに気持ちの入れ方で声のトーンも強弱もかわってくる。村田くん、だんだん仁太郎の素朴さもにじみ出てきた。
ユキちゃんは、この物語の中で、最初の出会いから仁太郎と深くかかわってくる。
もう一人の主人公ともいえる大事な役どころだ。

ユキの母親ゴゼさんの三味線に興味もった仁太郎が後をついていく場面。『ねえ、いつまでついて来る気なの?』のセリフ。
佐藤氏「変な子だなぁ、何でついてくるのかっておこってるんだけどね、本当におこっちゃダメなんだ。ちょっとお姉さんの気持ちで、かわいらしくおこってほしい」
またまた難しい要求だ。モニター室の監督からも「言い方が強すぎるね。元気すぎるのかな。もう少しやさしく言ってみて」とアドヴァイスが出る。古川さん、何回かくり返すうちに、見事にかわいくおこっている感じになっていくから不思議というか、さすがというか。

仁太郎に「どうしてユキちゃんは三味線やらないの?」と聞かれ答える場面。
『私は裁縫習って、お針子(おはりこ)さんになりたいの。大きくなってお嫁さんになるの』と言うが、どうもうまくいかない。だいたい、中1の古川さんにはお針子さんがどういうものか、イメージがわかないのだろう。初めて聞いた言葉だという。
その上、『大きくなったらお嫁さんになるの』のセリフも、今の子どもの将来像とは重ならない。ここも、彼女なりに苦労したセリフだった。
仁太郎の笛を聞いた留吉が、『仁太郎、大分上手になったなあ〜』と語りかける。
佐藤氏からは「留吉くんは仁太郎にとってただの友だちじゃない。いい兄貴分なんだ。上手くなったという時に“たいしたもんだ”って思って言ってごらん」との注文が出る。
すぐにペンを取り出す田谷くん。言われたことを台本に記入。「書いておかないと忘れちゃうんで」と。ひとつのセリフも、大らかな気持ちで言う時、ちょっとくやしい気持ちで言う時、それによって表現の違いが出てくる。笑い方泣き方にも鋭い注文が出され、何度もくり返しやっとOKが出て、本番録音となる。
最後に感動的で難しいシーンがもうひとつあった。
仁太郎とユキの別れの場面だ。桟橋(さんばし)から仁太郎が呼びかけるのだが、ユキの乗った舟がどんどん遠ざかっていく。その舟に向って仁太郎は『ユキちゃ〜ん』『タマナのおばちゃ〜ん』『ありがとうー』とさけぶ。佐藤氏はこれも「桟橋からの距離がそれぞれ違うんだ。声の大きさとか考えてみて」と指摘。
一行のセリフで、距離感まで表現しなくてはならない。
19:30 子役のアフレコ無事終了。3人ともそろって「難しかった」との感想だ。特に本人の絵がなくて、背景の絵に合わせてセリフを言うのは、本当に難しかったという。こういうアフレコをoffと呼んでいるのだが―。
村田くんも「練習はしてきたけど、気持ちの入れ方がむずかしかった。けど、楽しくできました」と帰っていった。
明日は父親役との対話の場面がある。
どうしても、最近の子の話し方はテンポが早くなる。また女の子も元気がいい。
江戸末期という時代や、さらに目が不自由だという仁太郎のあり方からしても、ゆっくりとしたテンポを要求する西澤監督。
その指導を担当する佐藤氏。絵とセリフがピッタリあうかチェックする下司さん。皆の息があなわいと、映画はつくられないと改めて実感した。
それにしても村田くんの泣き方が、バツグンにじょうずだった。2日目、3日目につづく――。
 
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