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NITABOHトップページ / メイキング / 音楽はワルシャワフィルで
今回は6月末にワルシャワで行われた、映画音楽の録音プロジェクトのレポートです。
6月26日、私達録音スタッフは日本からはるか遠くポーランドのワルシャワ、国立フィルハーモニーホールにいた。
以下の各ボタンから、今回録音された映画音楽のうち2曲、その一部をお聴きいただけます。
音楽監督のクリヤマコト氏、指揮者の天野正道氏を中心に構成された特別プロジェクトメンバー7名。この話がもち上がった時、「どうしてポーランド?」と誰もが思った。
ひとつは”質(レベル)の高さ”。ヨーロッパの交響楽は、何百年と培ってきた奥深いもので、レベルの高さは世界的にもその地位は揺るがない。
その上、ポーランドは少し前まで社会主義国だったこともあり、費用が日本に比べてはるかに安い。例えば楽器のパートごとに配られる譜面のコピー代だけでも、フルオーケストラとなると日本では60〜70万円もかかる。それがワルシャワでは、約20万円くらいと、かなり安くなる。
上質な音を、日本より安く・・・。今、日本映画の音楽は、こういった海外で録音することが通例になってきている。最近では『バトルロワイヤル』(深作欣二監督 2000年)、『アヴァロン』(押井守監督 2001年)などがそうだ。
またポーランド映画の歴史は古く、昔から良質な作品が生まれている。
第2次世界大戦下、ナチス軍に占領された時代の市民の抵抗運動を描いた、アンジェイ・ワイダ監督の「灰とダイアモンド」「地下水道」などは名作として有名だ。さらに今年(2002年)のカンヌ映画祭では、最高のパルムドール賞にロマン・ポランスキー監督(ポーランド人)の 「戦場のピアニスト」が選ばれている。
オーケストラの予約は夕方5時から9時の4時間。この間に全12曲を録音する作業が始まった。 思い思いのラフな服装で集まったオーケストラのメンバーだが、初見の楽譜で、すぐに演奏へと入っていく。
タクトを振る天野氏も真剣勝負。汗がどんどん噴き出してくる。こういった実際に1回のセッションで、約3kgの体重が減るらしい。
最初の曲が始まったとたん、音の正確さ、迫力、流暢(りゅうちょう)な流れ、全体のハーモニー、その全てに息をのむほどの感動が―。
す・ば・ら・し・い。
“ため息が出るほど、プロだ”。
頭の中でひとつひとつの曲がアニメの絵柄と符合していくからだろうか。悲しい曲では涙がでてくる。
想像以上の素晴らしさに、クリヤ氏も大満足の様子。ウィーンはもちろんのこと、ポーランドやチェコ、ハンガリーといった周辺の各国の交響楽は皆、レベルが高いが、どうしてだろうと、話が広がった。
おそらく、ことばに原因があるのでは、という。
スラブ語を語源とするポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語は日本語よりも音の幅が広い。幼い頃からそういう世界にいるので、楽器を演奏する時にも、イメージする音域が広いことが考えられる。
また、これらのことばは口から発した音を、みけんから頭に響かせるように発音するという特徴がある。大げさに言えば、頭がい骨に反響させるような。だから奥行きのある、響き渡るような音になるのではないだろうか、と。 民族が何千年も培ってきた歴史そのものが今、このホールに響き渡っている。
このホールの音のエンジニアさんが、実力者で、彼の耳をごまかすことは、誰もできないと、言われている。
「そこのバイオリン、こちらの音に負けている」「ハープは、もう少し音を出して!」と録音時、たとえ音楽監督がOKを出しても、何度もダメ出しをする。日本では考えられないことだが。
各メンバーの力や、このホールの特徴を最も知り尽くした上での的確な指示にどんな指揮者も納得してしまうという。
だが少し困ったことが起きた。アニメの絵の長さと合わずに、何回かとり直した曲もあったが、 予約は9時まで、このままいくと、少し録り残す曲がでてしまう。
天野氏曰く、「9時を少しでもオーバーすれば、たとえ1分でも、同じ料金がかかり、結果的には2倍になってしまいます。少しくらいサービスで、という融通はきかないんですよ、ここでは」。
”それは絶対に困る”とゼネラルプロデューサーの村上氏。残り時間30分、残りの曲4曲。別室で指示を出す、クリヤ氏と、エンジニアさんももちろんタイムウォッチとにらめっこだ。最後の曲を録り終えた時、私の時計では8時59分、いや9時ジャスト。
本当にプロです。9時までギリギリ一杯の時間を使って、いい音を追求してくれました。大成功!
「NITABOH」は津軽三味線をテーマにした映画で、音にもこだわって、制作している。
日本で生まれた、力強い三味線の音と、奥行きと広がりのある上質なオーケストラの音、 これがどんなふうに調和されて、映画音楽として完成していくのか。またひとつ期待してしまう。
ワルシャワまで3泊5日(クリヤ氏は仕事の都合上、2泊4日)というハードスケジュールも、ふっ飛ぶほどの出来ばえに、全員満足の帰途でした。
録音も市内撮影も大成功。
左から、ミキサーの成田一明氏(マウスプロモーション)、 映画の企画担当の西澤真佐栄(このメイキングも担当)、アニメーション監督の高岡淳一氏、ゼネラルプロデューサーの村上匡宏氏。
(注1)天野正道氏の経歴
1957年生 国立音楽大学作曲科を首席で卒業。
その後大学院へも進む。クラシックはもとより、ジャズ、ロックまでその活動範囲は広く、海外での活躍もめざましい。
作品を提供、共演した中には、国立ワルシャワフィル、ロンドンフィル、ニューヨーク室管弦団、ヴェルサイユ室内管弦楽団、と有名なオーケストラの名が・・・・。
また、コンピューター音楽の第一人者の一人でもある。
映画音楽でも、深作欣二監督の「おもちゃ」(2000)、「バトルロワイヤル」(2001)と続けて、日本アカデミー賞音楽部門最優秀賞を受賞している。
 
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